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The Black Stallion ワイルド・ブラック/少年の黒い馬

アメリカ映画 (1979)

撮影時11才くらいのケリー・レノ(Kelly Reno)が主演する野生の馬との友情と、白熱した競馬レースの両方を描いた名作。全盛期のコッポラ(Francis Ford Coppola)が総指揮をし、『地獄の黙示録』と同年に公開された。前半の漂着した孤島での少年と馬の心の交流、後半の行き詰る少年ジョッキーとしての活躍、どちらもとても良く出来ている。特に、前半、裸馬に跨って海岸を疾走するシーンは惚れ惚れするほどカッコいい。ケリーが乗る黒馬は、当時全米一のアラブ種の競走馬だったカス・オーレだ。

1946年、北アフリカ沖を航行する大型客船ドレイク号。アレックは船内を探検するうち、乱暴に扱われている黒い馬を見かけ、可哀想になって角砂糖をやる。一方、父はトランプで一人勝ちし、高価な宝石や金貨の中でも最も価値のあるアレクサンダー大王の愛馬ブケファロスの小さなブロンズ像とナイフを戦利品としてアレックに与える。しかし、その夜、客船は嵐の中で爆発し沈没。アレックが助けた馬と、船から落ちたアレックだけが近くの無人島に漂着した。いつしか仲良くなるアレックと馬。幸い漁師に発見され、アメリカに馬と一緒に戻る。そこで偶然、元調教師のヘンリー(Mickey Rooney)と親しくなっかことから、アレックは黒馬の乗ってレースに出たいと夢見るようになる。そして遂に、その夢は、アメリカでナンバー1と2の競走馬とレースすることで叶えられる。

ケリー・レノは、牧場育ちで生まれた時から裸馬に乗っていたと紹介されているが、そうでなければこの役はこなせない。ケリーがいくらソバカスだらけで、演技がイマイチでも構わない。映画の中でこれほどワイルドで、カッコいいことができる少年は、彼しかいないのだから。


あらすじ

ニューヨーク郊外出身のアレックは、父と2人で北アフリカ沖を大型客船の旅を楽しんで(?)いた。何もすることがなくて船内を歩き廻るアレック。馬のいななきが聴こえたので、見に行くと、真っ黒な馬が何人ものアラブ人にロープで引っ張られて暴れている。父に報告に行くが、父は大事な賭けの真っ最中。ポーカーの賭け金は天文学的なものになっていて、参加者は、現金だけでは足らず、自分の持っている最も高価なものを賭けている。最後の紳士が出したものは、小さな馬のブロンズ像だった。アレックは、置いてあった角砂糖を取ると、再び馬のところへ。丸窓に角砂糖を置いてやり、馬が食べるのを嬉しそうに見ているところが、如何にも馬好きな少年。
  
  
  

アレックが船室に戻ると、父は、ポーカーで勝ったすべての宝物をベッドの上にぶちまけ、アレックにみせびらかす。そして、山のようなお宝の中から2つだけアレックに分けてやる。1つ目はナイフ。「もう持ってもいい頃だ。私にはあるから、これはお前のものだ。ナイフがあると便利だぞ」。嬉しそうにナイフに触るアレック。そして、「いいか、これが中でも一番のお宝だ」と言って取り上げたのが、小さな馬の像だった。「アレクサンダー大王の愛馬ブケファロスだ」。そして、大王が如何に暴れ馬を宥め自分のものとしたかの逸話を話して聞かせる〔詳しくは、『アレキサンダー』のあらすじを参照してください〕。
  

夜、アレックはベッドから転がり落ちた。船が急に傾いたのだ。船室内のあらゆるものが倒れ、円窓は炎で赤く輝いている。アレックは、ナイフと像をつかむと、パジャマ姿で父と廊下に出た。廊下はまさに阿鼻叫喚の戦場。海水も流れ込んでくる。外では激しく火が燃え、波しぶきもひどい。火災を何とかしようと手助けに行く父。アレックは馬のいななきに気付き、船倉のドアを開けてやる。馬は、手すりを飛び越えて海に消えた。アレックも手すりの所にいたが、波にさらわれ海に落ちてしまう。
  
  

何とか海面に出て「助けて!」と叫ぶ。海面に流出した燃料に火が点き海も燃えている。生き地獄のような光景だ。馬の頭だけが見える。アレックは、何とか馬のロープにつかまり、体に巻き付ける。船はあちこちから炎を吹き出し、船尾を上げて沈んでいった〔下の映像は、右に船、左端に馬とアレックが小さく映っている〕。そして、アレックは気を失った。
  
  

アレックは、朝、波打ち際でを気が付く。体に巻きつけたロープはあるが、馬はいない。ナイフを拾い、波の来ない砂浜に行き呆然とたたずむ。そして、ポケットに入っていた馬の像に気付いてぼんやりと眺める。おもむろに岩場を上がり、高台に登って見渡すが、周りには海しか見えない。そして夕方、寝る場所を探し岩穴で丸くなって横になる。
  
  

2日目、周辺を探索していたアレックは、黒馬が、ロープに岩に絡まって苦しんでいるのを見つける。そして、暴れる馬のそばに恐る恐る近寄り、ナイフでロープを切り解放してやる。馬はあっという間に走り去った。
  
  

お腹がへったアレックだが、魚が獲れないので、仕方なく海草を食べてみる。案外おいしいので満足顔。遠くの海岸では、黒馬が、ブケファロスのように、尻尾を立てて駆けている
  
  

アレックが砂地で寝ていると、コブラが寄ってくる。目覚めたアレックの前で、威嚇姿勢を取るコブラ。アレックは恐ろしくて身動きできない。そこに突然黒馬が駆け寄って、蛇を蹴殺してくれる。そしてまた、去って行った。
  
  

アレックは馬と仲良くなろうと、海草を乾燥させて大きな貝殻に乗せる。馬が食べてくれたので、今度は海草を手にもって直接食べさせようと近付いていく。ここの逆光のシーンがとてもいい。邦題の「少年と馬」、そのものだ。頑張った末、やっと直接手から食べてくれた黒馬。かくしてアレックと馬は、浜辺を一緒に駆け回り、仲良くじゃれ合うようになる。このあたりのシーンは、まさに映像詩そのものだ。
  
  
  

遂に、アレックが黒馬に乗る時がやってきた。馬の背が高いので、そのままでは野生の馬には乗れない。そこで、海に誘い出し、泳いで馬の背に乗り移る。驚いて走り出す馬。アレックはたてがみにしがみついて落ちないよう踏ん張る。波しぶきを上げながら砂地を疾走する馬に、たてがみを握りしめ、半裸で乗るケリー少年の身体能力は凄い。最初の頃は何度も振り落とされるが、何日も経つうちに両手を挙げて乗れるようになる。カッコいいの一言だ。
  
  

こうした交流だけで映画が終わっても悪くはなかったが、そこに漁師の舟が突然現れる。パジャマの破れ具合から見て、漂着後数ヶ月は経っている。喜ぶアレック。しかし、漁師達は、気の荒い馬は無理だと考えアレックだけをボートに乗せる。それを見て浜で暴れる馬。そして遂にボートに向かって泳ぎ出した。喜ぶアレック。結局、アレックが馬に腹帯をかけて舟に吊り上げた。
  
  

ここで、場面はニューヨーク郊外の小学校の小さな講堂へと移る。壇上に腰掛けたアレック。上には「お帰りなさい」との文字も。そして、女の子が「アレック・ラムジーへの頌歌」を読み上げる。「私は、アレック・ラムジーほど勇敢な少年を知りません…」。これでヒーローになったことは間違いない。家では、優しい母がおいしい料理を用意してくれる。しかし、アレックは馬と離れられず、夜は、狭い庭につながれた馬のそばで横になる。そっと毛布をかけてやる母。そして、馬にむかって、「息子が戻って来るなんて奇跡ね。ありがとう」。
  
  

明くる日、ゴミの回収業者が庭に入ってきて、馬に仰天して門を開けたまま逃げ出す。馬もそこから外へ。数週間走れなかったストレスを解消しようと、猛然と街路を駆ける。飛び起きたアレックも追いかけるが、とても追いつけない。夜まで探し続け、そのまま街角で眠ってしまう。朝起きた時、通りがかった荷馬車を引く老人に「おい、何が起きた?」と声をかけられ、「何もかも」と絶望的に答える。救いようのない状況。しかし、運良く、この老人は黒馬の行き先を知っていた。喜んで畑の中の一本道を歩いていると、遠くの納屋から黒馬のいななきが聞こえる。「ブラックだ」と言って、一目散に駆けていく。納屋の中で抱き合う少年と馬。
  
  

そこに現れた農場主ヘンリー。朝食を食べさせてもらいながら、アレックが言い出す。「ここが気に入ったみたいだ」。自分の家の狭い庭では、どだい無理なのだ。伸び伸びと動き回る黒馬を見ながら考え込むアレック。納屋でヘンリーが、「なあ、もしお前さんがここをきれいに掃除するんなら、馬を置いてやってもいいぞ」と申し出てくれたので大喜び。その後、農場通いをするうち、アレックは閉め切ったドアの奥の部屋に好奇心から入っていき、並んだ多くのトロフイーから、ヘンリーが優れた競走馬の調教師だったことを知る。ヘンリーと一緒にいる時に、それとなく、「ねえヘンリー、ブラックって速い?」と訊いてみる。「速いぞ」。「競走馬になれるくらい?」。「アレック、ブラックはアラブ種だ」「速いのは速いんだが、血統登録証明書がない」「それがないと競走馬登録ができない」。アレックはさらに、「訊いていい?」。「ああ」。「どうして調教やめたの?」。「疲れた」。「もう一度、やってみる気はある?」。「あるとも」。これで決まりだ。
  
  

ヘンリーは、本格的に調教をスタートした。まず、野生の馬に、鞍とあぶみを慣れさせないといけない。それが済むと、次は、ワラの台に跨ってモンキー乗りの特訓。これまで培ったノウハウすべてをアレックに教え込む。そして十分慣れた頃、本物の競馬場で走ってみることに。もちろん、許されるはずがないので、ほの暗い早朝に無許可で走るのだ。「いいか、アレック、秘密厳守… それがキーワードだ」。バレたら大変なことになるのだ。もちろん入口には守衛はいるが、昔からの友達だから問題はない。一緒に、試走にも付き合う。誰もいない競馬場のコースに向かい、合図とともに走り出すアレック。握力の弱いアレックは、手綱が巧く握れなかったが、馬の方が勝手に走ってくれて、驚くほどの速さで一周できた。大喜びで、友達の門番に、実はアメリカ一の競走馬とレースさせたいと打ち明けるヘンリー。「そりゃ やりすぎだ」「凄すぎる」「俺までおかしくなりそうだ」と門番。しかし、顔は笑っている。
  
  

全米一有名な競馬の解説者(当時はラジオしかない)に話を持ちかけ、最高に速い馬を見に来てくれるよう頼んだヘンリー。来てくれる保証はないが、アレックと競馬場に出向く。雷鳴の轟く真夜中、待ちに待った人物が高級車で到着。急に土砂降りの雨。その中を疾走する黒馬とアレック。悪条件にもかかわらず凄い速さで一周。アレックはたてがみを握りしめたまま気絶していた。ドロドロの地面にもかかわらず、真っ白なズボンと真っ白な靴で、馬に近寄り、目をみはる解説者。ようやく回復したアレックが発した最初の言葉は「何があったの? 僕 落ちた?」。「いいや、手放さんかった。見事だった」とヘンリー。アレックの手の中には黒馬の毛が残っている。馬から降ろす時、たてがみを放さないので、切り離したのだ。数日後、ラジオで解説者は興奮して話している。「私は、サイクロンとサンライダーが最速の馬だと言いました。撤回します。想像を絶する馬を見たからです。悪魔に憑かれたような、信じられない速さです。レースに出たことはありませんが、競馬史に必ずやセンセーションを起こすでしょう。来るマッチレースで、ぜひこの謎の馬と勝負されるよう、2頭の馬主の方に申し入れます。ジョークではありません。私の全信用を賭けて、この謎の馬は本物です」。これを、満足げに聞き入る2人。
  
  
  

参加が認められると、一番の難関は、如何に母にOKをもらうかだった。突然、何でも手伝うからと言い出し、レースの新聞を母に見せる。そして、「ブラックが謎の馬だよ。僕が乗るんだ」とポツリと言う。そこにタイミングよくヘンリーがチャイムを鳴らす。さっきの言葉が信じられなくて、「アレック、ちょっと待って、もう一度、言い直して」とドアの前で訊く。「ブラックが謎の馬だよ。僕が乗るんだ」と同じ言葉をくり返すアレック。「あの馬は謎の馬なんかじゃないわよ。もしそうでも、あなたには乗らせない」。客がヘンリーだと知ると、ヘンリーにも、「私がレースに出すとでも? きっと殺されるわ」「息子を危険にさらす気なの? 私は嫌よ」「夫を失った。息子まで失いたくないの」と完全否定。そんな母に、アレックはアレクサンダー大王の馬の像を渡し、パパが死ぬ前にくれたこと。海に飛び込み溺れかけていたこと。「真っ暗で… 僕… パパって叫んだ。でも… 見上げると… ブラックがいたんだ。だから、しがみついた」。このとつとつとした真摯な言葉に打たれた母。「私はどうしたらいいの?」。「乗らないと」とアレック。
  
  

ジョッキーは、同一の体重になるよう重りを持たされるので、子供のアレックにとっては不利だ。そこでヘンリーはわざと重いヘルメットを被せ、前検量をパスさせた。黒馬は、ゲートインする前に、もう一頭の馬とケンカして蹴り合い、脚にケガをしてしまう。ゲートインしてそれに気付いたアレック。躊躇してスタートが遅れただけでなく、止めようとしてさらに時間をロス。黒馬は、ケガにお構いなく走りたがるので、そのままレースに参加。しかし、他の2頭とは相当離れてしまった。あと一周で、アレックは重いヘルメットを脱ぎ捨て、全力疾走に入る。あれだけ離れていた距離はどんどん縮まり、最後の直線コースで追いついた。ウィニング・ランで両手を挙げるアレック。両手放しは島での再現で、映像もダブらせている。ただ、興をそぐようで申し訳ないが、レース終了後に行われる後検量で、ヘルメットを脱いだことが失格にならないのか疑問だ。1946年には、そのようなことは行われていなかったのかもしれないが。
  
  

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